2012年3月アーカイブ

(続き)

森崎東監督。

松竹出身で東映やATGでも作品を残し、近年ではシマフィルムで『ニワトリはハダシだ』を撮った監督。
庶民を描き、「喜劇」でも「悲劇」でもない「怒劇」と評された森崎監督の世界は、人情と反権力に彩られた、無力な市井の人々の哀しさと底力がいっぱい詰まっています。特に『生まれかわった為五郎』『街の灯』『特出し ヒモ天国』の3本は僕の人生の中でも屈指に好きな作品で、いつか自分もこういう映画を撮りたいと本気で思っておりました。

ロビン西さんと森崎東監督。
勝手な思い込みですが、僕はもう運命のようなものを感じておりました(笑)

早速、ロビン西さんとお酒をご一緒しました。
一言で言うと、めちゃめちゃおもろいおっさん、でした(笑)
会った最初の瞬間から「口がオモロい事言おうとする形になってる人や」と思いました。そして終始、オモロな空気をかもしてはりました。
「ああ、ロビンさんと一緒に何かしたい!そりゃハヤマックス君がいつも話題にする訳やわ。」そう思ったのです。

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それと同時に、普段から「角川映画全盛期のようなアイドル映画が作りたい」というのが酔った時の口癖だった前田Pにも話を持って行きました。『ソウル・フラワー・トレイン』はアイドル映画とは全然違う題材ですが、ロビンさんにも相談して、映画オリジナルの若い女性キャラクターも大胆に取り入れました(笑)。もちろん、原作の世界の中でキャラクターを動かす事を楽しみながら、映画版のプロットを作りました。「映画は原作の良さを壊してる」と言われないように、そして映画の表現としての面白さを存分に出せるように、共同脚本の上原さんと何度も朝まで頭を捻りました。結果、脚本の半分は映画のオリジナルになりました。

完成した脚本に、ロビンさんから「染みるわぁ」と嬉しい言葉を貰った頃、主演の平田満さんが決まったのです。

平田満さん。

もう映画ファンならお気づきでしょうが、平田さんと言えば、森崎東監督の『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』の先生役が大好きで、僕はこの映画の最初の拉致シーンを毎年、自分の授業で学生に見せているほどです。その他でも神代辰己や深作欣二など僕の大好きな監督の作品で印象深い演技をされてる平田満さんに出て頂けるなんて、めちゃくちゃ光栄だと思いました。

そしてこの映画の為に出会った活きの良い女性キャスト達が揃いました。
真凛さん、咲世子さん、大谷澪さん、それぞれ面白い魅力を持った女優さんです。
そして上手くサポートしてくれた大和田健介さん、
ここぞと存在感を示してくださった駿河太郎さん、そして「ソウル・フラワー・トレイン」のヘンテコで魅力的な人々を演じてくれた芸達者な方々、
とにかく良い役者さんに恵まれました。

そしてまさかの少年ナイフが参加して下さいました。自分の映画の主題歌に流れるなんてテンション上がります。
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(写真:撮影にも参加して下さった少年ナイフの皆さんと、手前は立ち位置確認なのに目立ってるスタッフ

さらに昔からの盟友であるカメラの高木風太と録音の松野泉を筆頭に若くてタフなスタッフが集まり、
さぁいよいよクランク・インまでこぎつけられた訳です。

僕は思いました。
やっぱ映画作りは胸躍るし、めちゃくちゃ楽しいし、最高や!


しかし、現場は森崎東監督の映画『ロケーション』ばりにサバイバルな状況になるとは、誰も予想してませんでした(いや、ちょっと予想はしてたかも 笑)


という事で、現場の話はまた次回。


映画『ソウル・フラワー・トレイン』ホームページ

出演:
 平田満
 真凛  咲世子
 大和田健介 駿河太郎 大谷澪
 楠見薫  和田めぐみ  入矢麻衣
 浅野彰一 中村真利亜 清水かおり 山根千佳
 細川博司  安藤匡史  信國輝彦 小沢和之

音楽:
 少年ナイフ

公式ホームページ
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(写真:ロビン西さんと前田P)

前回の日記では、ALEWO企画を立ち上げようと思った理由のような事を書きました。
「漫画の映画化」という企画の中で自分の色を出してみる事に凄く興味を持ったのです。それまでの1〜2年間、あるインディーズ映画の企画の準備をしていたものの、なかなか実現に至らず、ちょうど新しいモチベーションを探していたのもあります。

でマックスマガジン(http://www.project-max.com/)をやってる友人のハヤマックス君に相談しました。
ハヤマックス君は凄い漫画好きで、漫画愛から多くの漫画家さんたちとイベントをやったり、インタビューしたり、企画を考えたりしてるなにかとお節介で面白い人です。
で、彼とお酒を飲み、「漫画原作で映画を撮るシリーズをやろう」という事になり、一番最初にお互いの頭に浮かんだのが同じ名前でした。

ロビン西さんでした。

ハヤマックス君は普段から飲むとロビン西さんの話題を必ず1回はするというファンでした。そして僕もリアルタイムで『ボエやん』を連載で読んでましたし、アニメ映画になった『MIND GAME』も好きでした。
「ロビン西さんの漫画ならノリノリでデタラメな世界の映画に挑めるぞ!」
そう思ってる僕に、ハヤマックス君が貸してくれたのが『ソウル・フラワー・トレイン』だったのです。

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恥ずかしながら未読だったその漫画は、大阪の下町を舞台にした、とても優しい物語でした。デタラメさよりも、丁寧に人の気持ちが描かれた叙情的な漫画でした。
それを読んで僕が頭に思い浮かべたのは
「ああ、まさかこんなにも早く、森崎東監督の世界に近づけるなんて思ってもみなかった!」という事でした(笑)

続く
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ALEWO企画第一弾映画で、
僕の久々の長編作品であり、
実質的な商業デビュー作品(今やインディーズも商業も線引きは無くなってますが便宜上の、)となるであろう、

劇映画『ソウル・フラワー・トレイン』。


事故も無く、風景撮りとダンスの撮影を残し、
クランクアップ致しました。


予算も守り(たぶん)、
スケジュールも守り(ほぼ)、
連日の雨に泣かされつつも(晴れた日は1日くらいだったかな...遠い目)、
キャストとスタッフの皆さんの強い協力があって(あまり寝かさずすみません...)、
事故もなく(トラブルは山盛り)、
多少の怒号は飛び交いましたが(そりゃ現場はそうだよ)、
終わってみればアっと言う間で遠い昔の事のようです。


なんと、もうあそこに戻りたくなっています。
とても魅力的な人たちと一緒に居たんだな、そう思います。


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この作品は、ロビン西さんの漫画を原作にしています。
と言っても、別に僕は企画を与えられ、雇われて監督になった訳ではありません。
僕もプロデューサーの1人みたいなもので、進んでこの映画を作りました。


AREWOを命名したのも、
この企画の発案者も、僕です。
そこに世代を超えた友人である前田さんとハヤマックス君を巻き込んで、プロデューサーをお願いしました。


ある日、こう思ったのです。
自主映画を撮り続けてて世界的に評価されるほど、自分は強固な作家性を持った監督ではない。どちらかと言えば、会社から与えられた娯楽映画の企画の中で、自分のカラーを出してこそ活きるタイプじゃないかと。


これ、別にネガティブな話じゃないですよ(笑)
自分をどう適材適所に置こうか、と客観的に考えての事です。
そもそも僕は、歴史に名を残す職人監督たちが好きなのです。


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で、
どうしよう?
そうだ、自分自身に娯楽映画のオファーをしてみよう。
プログラムピクチャーを意識して、映画を撮ってみよう。
そう思いました。


もちろんこれは僕の個人的なテーマでしかなく、
二人のプロデューサーにはそれぞれの思惑があります。
僕はお金を集めてくれたプロデューサー達に、
そして映画化を快諾してくれたロビン西さんに、
それぞれ責任を果たさなければなりません。
原作の人情喜劇というジャンルをキッチリ撮りつつ、自分のカラーも出し、観客も楽しませる。みんなが幸せ(笑)
それはワクワクするチャレンジだと思いました。


こういう映画の撮り方をした人を過去に1人知っています。
それは黒沢清監督です。
映画のタイトルは『地獄の警備員』。
いや、その時の黒沢さんが何を考えてたかは実際知りません(笑)
それにちょっと違うかも。ホラーというジャンルを撮るってテーマが黒沢さんにはあったし(笑)
まぁなんか「黒沢さんもそんな感じだったんじゃないの?」という思い込みですよ、僕の。ふふふ。



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で、
そんな事を考えて挑んだのだ、
とまず最初に書き記したかったのです。
作家性の話や、ストーリーのテーマや、映画のクオリティの話の前に。


これから編集作業に入ります。
公開は年内を予定していますが、その辺はプロデューサーにお任せします。


次に役者さんや現場の事を書こうと思います。


あ、大事な事を忘れちゃダメだ。

この作品に関わって下さったキャスト&スタッフ&関係者の皆さん、
応援して下さった皆さん、

本当にどうもありがとうございました!

大きな力を頂きました。



映画『ソウル・フラワー・トレイン』ホームページ

出演:
 平田 満
 真凛  咲世子
 大和田健介 駿河太郎 大谷澪
 楠見薫  和田めぐみ  入矢麻衣
 浅野彰一 中村真利亜 清水かおり 山根千佳
 細川博司  安藤匡史  信國輝彦 小沢和之

音楽:
 少年ナイフ

公式ホームページ


メモ

1/1
『イングロリアス・バスターズ』
痛快。ベールを降ろす女の美しいアップから、映写室での撃ち合い、スクリーン浮かぶ大笑いの女の顔まで圧巻。

1/2
『告白』
ナレーションそのものの怖さ。空気の怖さ。トーンの映画。
最後に人間の顔をする松たか子のショットで終える構成の妙。

1/5
『アウトレイジ』
暴力の小津映画。アップ、淡々、暴力の繰り返し。情緒や死生観など描く事をせず、ひたすら連鎖のシステムを描く武映画の極北

1/6
『デス・プルーフ』
尻の素晴らしさ。たった一発の銃声から、怒濤の高揚感。素晴らしい。

1/8
『草の上の仕事』
気まずい表情とエロティックな距離感

1/9
『ブルーバレンタイン』
希望の無いラストに不満

1/10
『贖罪 フランス人形』
『おろち』形式のドラマ。ハイキーの照明が上手い。シーツを干すベランダとベイエリア、橋の下のシルエット、坂道の多いアパートの町。風景が素晴らしい。蒼井優は少し生身過ぎだが切替の演技が良い。森山未來が冷血爬虫類で、小泉今日子が老けてて怖い。

1/11
『少女たちの羅針盤』長崎俊一
舞台を描く事から逃げてない。恋や家庭環境や青春期の変化が活きいきと描かれている。
成海璃子のはみ出し方、忽那汐里の不思議な間合い、少女たちがそれぞれ魅力的。そして堂々としたラストカット。ウエルメイドな名作。

1/15
『MAD探偵』ジョニー・トー
カット割のトリック。奥さん登場の衝撃。七人の容疑者の設定の面白さ。
物語的には失速するのが惜しい。もう少し、複数人格との攻防が見たかった。

1/15
『夜の大捜査線』
監督ノーマン・ジュイソン
撮影ハスケル・ウェクスラー
編集ハル・アシュビー
音楽クインシー・ジョーンズ
主題歌レイ・チャールズ

シドニー・ポワチエの都会的で静かな身のこなしと秘めた熱い血、ロッド・スタイガーとウォーレン・オーツの人間臭さ、南部の風景とブラックミュージック。最高。
白人を平手打ち、ガレスピー署長『あんた俺達と同じ価値観だな』、痺れる。

1/15
『贖罪』第二話
小池栄子と小泉今日子の真っ直ぐな表情とシンプルな仕草。小池栄子の剣道のシーンの素晴らしさ。『PTA総会を開いて下さい』の台詞でテンションが上がる。
照明がワンカット内で変化する。殴られて倒れる救いの無さ。

1/17
『ヒア・アフター』
助けを求める者同士の運命の出会いを静かに描く、クラシックなアメリカ映画。
手に触れる人と、触れそうで触れない人の小さなサスペンスが上手い。
見終わった後の想像と違う着地点に驚いた。ロマンス映画だった。

1/21・22
【京都造形大2・3回生合評】
『棒つきキャンディー』酒井麻衣
・漫画のコマから実写への移行が上手い
・現在と過去を一本のキャンディーが繋ぐワンカットが良い

『うつうつつ』林風斗
・森の暗さ、サイレンの異様さが盛り上げる
・カットの硬質さ
・ホラーを老人の孤独に繋げた着想がいい

『ルーザー』小林由佳
・最後の台詞『あんた女の格好してるけど本当は男なんだろ』を効かせる構成の妙

『キラキラ』工藤智之
・走るラストカットと電車のタイミングの絶妙さ
・日記を独白するシーンの時間の流れ方
・傘がゆっくり剥がれるキスシーンは名場面

『手を離しても』
・髪を結ぶ事で親子が同志になる演出
・シャボン玉を吹く親子の背中が印象的

『えつ子のかお』坂井佳絵
・冒頭の川を見つめる透明な表情が良い
・えつ子の包帯の顔とちぐはぐなテンションの高さが怖い。『泊めて』『帰れ』の台詞。
・ブスと罵りあう二人の台詞。直後に「憧れは貴方」と告白する場面。
・なぐると思ったら変な顔する青年。素晴らしい。

『雪の砂漠』野田英希
・ダンスする女と観る女の背中の哀愁
・Y字路や砂漠の遠くまでクリアな映像
・主人公の女の表情の透明感


1/22『贖罪』 第三話
安藤サクラのシルエットの黒さと異様さ。走る安藤サクラの異様さ。怪物化。
少女の頭に触れる加瀬亮の手の怖さ。筋肉を鍛える加瀬亮の後ろ姿
病院の入口の階段で始まる、終わるハードボイルドな感じ。
フラー『裸のキッス』みたいな怖さ。

1/26
【京都造形大4回生合評】
『破れタイツ』吐山由美・西本真希子
・役者二人のハミ出し方が良い
・笑えるエンタメ青春映画

『拝啓、ヨーコちゃん』村山宗一郎
・走る爽快さ、映像の快楽
・女の子が妙にリアル

『美味しい朝食』河股藍
・ミニマルな日常の描写の中に、感情が滲んでいる

『ソノサキニ』
・カモメの大群のオープニングカットと、工場の人々のラストカットの呼応
・震災映像が短いのが良かった
・祭りの美しさに涙

1/30
『贖罪』 第四話
悪女モノ。とんでもなく冷たくて怖い。池脇千鶴と小泉今日子の冷めた表情対決など、黒沢さんの新境地。ブニュエルみたい

2/4
ハイバイ『ある女』@名古屋七ツ寺。
ルックスも普通、ちょっと美術館とかも行く、自嘲しながら不倫もする、バーのカウンターでよく見かけそうなOLの女・タカコの地獄巡り。岩井さん粉するタカコが、色んな場面で被害者の立場を、戸惑いつつも呑み込む芝居がリアルで、笑いを誘うし哀しい。
夜の公園のシーンは、わりと自分の立場をわきまえて笑いに変えて生きているタカコの、ふいの感情の氾濫が胸に迫って、良かった。
それぞれの場所で、やれる事をやるだけしかないんだな、そういう気持ちにさせられた。

2/5
『贖罪』最終話
香川照之の走り、怪演、落ちるビーズ。小泉今日子の表情、ゴミ袋に激突。
二つのアクション、自動車事故と線路での自殺の即物性。クール。
霊に導かれた二人のホラーに見える。

2/8
『大阪外道』石原貴洋
子どものリアクションが良い。生活の身体のままで子供を撮る事の奇跡。

2/19
『小早川家の秋』
何気ない台詞の連続だが、リズムを生んでいて心地よい。アクション繋ぎ。顔を動かしたり、手を動かしたり、それを流れるように編集の心地良さ。それはミュージカル的快楽。
鴈治郎や、妾の浪花千恵子の人物像など、ある大らかさの魅力。
原節子と司葉子の動きのシンクロ、舞踏的美しさ。
情景カットのネオンや観光名所をさり気なく入れ込みつつの美しさ。セットの色気。
森繁は小津の枠の中でギリギリまで演じてて跳ねる。

3/14
『戦火の馬』スピルバーグ
荒畑を鋤で耕す最初の盛り上がり。大勢のギャラリーのいい顔。石が割れ、傘を忘れて見守る人々。地を這うカメラワーク。全てがベタな累計的な人物ばかりなのに感動的!!
地味なエピソードで出来ていて、派手な感動させようとするエピソード(例えば馬が人の窮地を救う、など)が無くて、渋い。好みの映画。
馬を助ける為に敵同士の兵士が協力しあう場面など、フラーの映画みたい。

3/16
『高海抜の恋』ジョニー・トー
プロットが練りに練られていて、驚愕!! 映画内映画に伏線を収斂し、流れるドレミの歌声と、スクリーン越しに交差する視線に落涙!!
死んだと思っていた恋人の奇跡の事実、そして映画スターは振られた女優にシナリオを読ませ、映画の中でラストシーンをハッピーエンドに変える。そこにリアルな自分の姿を描いてみせる。それを観た残された女はようやく過去と向き合える。


3/17
『幕末単身赴任』前原くん
牛鍋を発明してしまうエピソードは微笑ましい。
自分の袴にもお守りと娘の習字の縫込みがある場面は良かった。

『EDO OF THE DEAD』山本清史
卒塔婆を剣のように背負う忍者のキャラが良い。カンフーアクションはクオリティが高く、感嘆した。花魁の語りの緩急など、演出が上手い。
個人的には「伝統」との接点を見つけたらもっと面白いのでは?と思う。