西尾孔志

20111102『とまる。』の寄稿2 バンタムクラスステージ『ジャック・モーメント』KUNIO『椅子』男肉 du Soleil「Jのとなりのオニク」テフノロG、BABY-Q『私たちは眠らない』

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震災以前から、既に演劇は祈りに向かっていた

 

演劇の門外漢だったはずの僕は、気がつけば4月から劇場で働いていた。■バンタムクラスステージ『ジャック・モーメント』は、シカゴマフィアの重厚な叙事詩を、劇画的な台詞と鮮やかな場面転換の連続、照明と音楽のエモーションで魅了する。だが作演・細川博司の手腕に比べ、役者の身体が弱く、印象に残らない。凄く勿体ない。■例えば名古屋で観た杉原邦生率いるKUNIO『椅子』は、イヨネスコの戯曲を演出で換骨奪胎し、無意味な観客参加型パーティへと変貌させ、楽しさ以外は何も残さない。しかし役者の圧倒的な身体がクライマックスで「芝居」そのものの凄味を感じさせる点で、バンタムにはない「戦略」があった。■逆に、役者の身体の弱さを魅力に変えていたのが男肉 du Soleil「Jのとなりのオニク」。冴えない男達が汗かいてリズム感悪く一生懸命踊る姿に微笑みつつ、宮崎駿からトロンまでパクった、とにかくどーでも良いのにやたら壮大な話に、「引きこもりが1万ページのくらい書いたセカイ系小説の、その熱意に感動する」みたいな妙な感動のさせられ方を体験した。■若い劇団では、京都学生演劇祭で観たテフノロGの今後が気になる。ここまで完成された馬鹿はそういない。振り切っている馬鹿さ加減に、もはや前衛を感じた。将来を期待したい。■さてベストを。BABY-Q『私たちは眠らない』。地震や紛争で混迷する私たちの姿を、そしてこの世界の現状を、鋭利に、しかし淡々と描き出したダンスパフォーマンス。舞台上で起こった(まさにそれは起こった!)いくつかの災害のイメージは、忘れることができない。都会に立ち上がる墓標、女子高生を飲み込む巨大で禍々しい黒煙、「閉店セール」の旗を振るキャンギャル、巨大な十字架が空に浮き上がり、差別と争いが続く。そして最後、観客は「空爆」を体験する。暴力的な空爆音の衝撃に「今、これを語らなければ」という東野祥子の凄まじい気迫を感じた。■東京から来たハイバイ『投げられやすい石』快快『SHIBAHAMA』というベクトルの違う2つの劇団は、どちらも「何故、僕たちは幸せになれないのだろうか」という前提とそこへの祈りから舞台を起こしているように見えた。その視点がある物を、今、もっと観たい。

 

ベスト ◎ BABY−Q『私たちは眠らない』

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