2011年2月アーカイブ

ナシム・アマウシュ『さよならゲーリー』
my French Film Festival

インターネットで世界同時に観ることができるフランス映画祭「my French Film Festival」で、傑作と出会った。『さよならゲーリー』。監督はNassim Amaouche。

南仏。産業が寂れた町。もう何も大きな事件は起こらないこの町に、数年ぶりに刑務所から帰って来た男の、その父や弟、周囲の町の人々とのささやかな生活を静かに見守る作品だが、細部の描写のユニークさに惹き付けられる。
ファーストショットの線路を走るメルセデスベンツ、家から飛び出してくる自転車、障害のある男の乗り物でありながら何故か友人知人のタクシーと化している電動車椅子など、乗り物とその運動の愉悦で心地良く映画が始まる。登場人物も、隣の奥さんと恋人関係である父、その奥さんの自閉症の息子、ヤクの売人をしてる車椅子の男、歌のうまい異国の女、スーパーでネズミの着ぐるみを被る弟など、ユニークだが過度にキャラクター化されていない、血の通った人々が生き生きと描かれる。
そんな中、男は父と二人、ある大きな機械の修理を始める。その機械が動き出すラストシーンが素晴らしい。冒頭にいくつか乗り物を印象づけておいての、あのラスト。語りのバランスが絶妙で見事に裏切られた。公開されるか分からないのでネタばらしはこの辺にしておくが、産業が死んだと思われた町とそこに生きる人々が、「まだ死んでないぞ!」と心臓の鼓動を高らかに鳴り響かせる、素晴らしい人間讃歌であった。

例えば日本のサブカルチャーで言うところの『セカイ系』に、リアリティーを持たすとこういう映画になるんじゃないかな。日常生活規模のマジックリアリズムというか。あと、細部には北野武の影響はあるように思えた。
以前、イ・チャンドン監督から『物語の欲望に引っ張られない』という話を聞いて、まさに『ゲーリー』はその上品さがあった(もちろん過度な物語も好きですが)。

あと個人的には僕も父親が1人でやってた町工場を手伝ってた時期があり、その辺も重ねて見た。あのラスト、父にも見せてやりたい。

2月4日
青葉市子@アバンギルド

大学の用事で京都に行ったついでに前から気になっていた青葉市子さんのライブを観て来た。
まだ20才くらいの若くて黒髪の似合う美人がギターを持って静かに歌いだすと、場の空気が一気に変わり、時間が止まった。
歌われるのは若い女性が胸の内に秘めた物語。
それをいにしえの語り部のように静かに歌声で紡ぐ。

しかし歌の間に見せる生の表情は飄々とした愛嬌のある女の子のそれで、CDでは垣間見る事の出来ない意外な一面に魅せられた。アンビエントな雰囲気の楽曲が多いCDと違い、大豆と巨乳の町に生きる胸の小さな少女の歌「イソフラ区ボンソワール物語」というユニークな曲など、この人、かなり変だ(笑)いやヘンタイだ。(失礼!)

最後のアンコールでは『カメムシ大行進』という謎すぎるシュールな即興曲で終了。
そういう面も含めて、いやマジで大物の風格。てか20才だよ!

HP(マイスペから音源聞けます) http://www.ichikoaoba.info/index.html
2月2日
突劇金魚『巨大シアワセ獣のホネ』@精華小劇場

以前、映像作品に出て頂いたサリングさんが作/演出/主演をつとめる突劇金魚の公演を観て来た。サリングさんは「愛情マニア」という作品で08年にOMS戯曲賞の大賞を授賞している若くて美人で元気な女の子だ。

初日に行ったせいか、音声が聞き取りにくく(音楽が大きいので余計に聞こえなかった)、照明や舞台装置などのタイミングもズレていたように思う。だからひょっとしたら2日目以降は鳥肌ポイントがいっぱいあったのかも知れない。僕は多少の雑さやチープさに対して寛容的な方ですが、「ここぞ」というポイントは初日とはいえ外して欲しくなかったなぁ。電車が通過する照明効果なんて面白いのに、ドンピシャに役者が立ってなくて少しズレちゃってたり、舞台美術が一気に落ちる瞬間の照明が消えるのが一足早かったり(落ちるとほぼ同時過ぎて一瞬分からなかった)、そういう見せ方で、観客としてつまずいてしまった。だから物語が入って来なかった。
去年末から東京や京都で観て来た演劇の多くには、役者の身体も含めての視覚的な演出に感動させられていたので、今回は余計に目がいっちゃった。でもタイミングがズレるってことは観客をリズムに乗せれてないって事だから、やっぱ大事だと思う。ロックっぽい音楽がかかるからグルーヴが派生する訳では決して無いのだ。
あちこちで活動多忙のサリングさん。初日で大変だったのだろうか。次回に期待。

1月23日/30日

京都造形芸術大学 映画学科合評会


今年も1月はゼミ生たちのケツを叩いて、なんとか合評会に間に合った。

西尾ゼミは2本。どちらも初めて映画を撮った喜びに溢れる佳作。

村部遼監督『ナチョフ同志』はとっても素直な青春ファンタジー。ラストの可愛らしい1シーン1カットは、技術こそまだまだだけど、しっかり感情がこもってて泣きそうになった。実際、合評会に参加していた学生数名からも「泣いた」という感想を貰った。

もう1本の坂井圭絵監督『ラブホテル』も70年代の日本映画のような屈託した青春映画で、編集が少し長いのが難点だが(これから映画祭応募に向け、切るらしい)、これも良かった。

上映後のベンチで、学科長の林海象監督と教授の東陽一監督が、両作品のシナリオを手がけた坂井圭絵をかなり褒めて下さった。良かったな〜坂井!


去年のゼミ生だった柴田有磨も格段のスキルアップを見せてくれて、なんだか嬉しい合評会となった。いやぁ、1年間京都まで通って良かったと思ったわ。


ちなみに今年も西尾ゼミの2作品は、京都三条アートコンプレックス1928で上映会を開く予定です。3月最終週の予定。またここで告知します!

1/9

M☆3『こいのいたみ』@伊丹アイホール


以前、飲みの席でご一緒して「クレバーな人だなぁ」という印象を持った杉原邦生氏が演出するというので、伊丹までいそいそと観に行った。

劇場内に入ると、簡素な舞台の上にこれまた簡素な椅子とテーブルが置いたあった。「あれ、以外と普通に演劇っぽいのね」と思って座ったが、これが罠だった。その椅子とテーブルは開演の音楽と同時に天井へ飛んで消えてしまったのだ。

「え!これ、ギャグじゃん!ヤラレター!」そこからはニヤけ顔が止まらない。ナンセンスなギャグの応酬が常に演劇に言及しており、知的でスマートで痛快だった。舞台空間も、クラブから野外劇場にまでコロコロと変化を見せ(って簡単にいうけどw ビックリした!)、歌と踊りからチェルフィッチュのガチなパロディまで飛び出した。もう攻撃的すぎる!しかも底には厳しい現実認識もある。映画で言うと、大島渚のアイドル映画や60年代のゴダールにも似た構造的ギャグ作品だ。

そして、杉原氏が京都で手がけた演劇企画【HAPPLAY♥】に対する自分自身の回答とも思えた。マレビトの会やdots、木ノ下歌舞伎などの京都に縁深い役者を使い、「京都の身体とは何か?」「今、東京とは違う、京都で同世代の演劇人で出来る事とは何か?」という批評と宣言を同時に行っていた。

文学的なテーマを避けつつ、演劇表現の中でこそ思考すべきだという姿勢に、そしてそれを僕のような演劇素人でもエンタメとして楽しめる演出の手さばきと腕力に感服した。


次の名古屋でのKUNIO08『椅子』も楽しみだ。



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『とまる。』鼎談

お相手

 橋本裕介氏(キョウトエクスペリメント)

 杉原邦生氏(HAPPLAY)

 沢大洋氏(京都学生劇団演劇祭)


京都の演劇フリーペーパー『とまる。』で、上記のガチな演劇人3名と鼎談をしました。3時間半も語った内容が、編集長である高田斉氏の英断で、文字と写真を小さくしてほぼ全文掲載されています! パンクな雑誌だ(笑)

京都エクスペリメントという演劇祭と京都の演劇状況を色々語っていますので、興味ある方は手に取って下さい。2月初旬に京都の演劇関係のアチコチで配布されます。是非〜。