2010年12月アーカイブ

12/25(土)

『水戸黄門』『直射月光』『ダム』

『きゅうそくかいおん』『ウシウシモウモウ』

12/26(日)

『にじ』(全て監督:鈴木卓爾)

@神戸映画資料館 (イベント名:誰も寝てはならぬ)


映画『ゲゲゲの女房』で話題を呼ぶ鈴木卓爾監督の、ぴあフィルムフェスティバル受賞作を含む8ミリ時代の初期作品をまとめて観てきた。どの作品からも『ゲゲゲ』や前作『私は猫ストーカー』の原点が見えた。


まず思ったのは「思いつき」を即撮影する自由度の高さから来る心地良さや痛快さ。当時20代前半らしき若い鈴木卓爾監督は、川に飛び込み、火を付け、歌い、奏で、逆立ちをし、コンドームを膨らまし、自分以外の出演者にも無茶苦茶な事をさせる。(若い井口昇監督が頭に発煙筒を乗せながら太鼓を叩いて夜道を行進する場面もあった)。もちろんただのホームムービーではないのは、「撮る」という強い意志が画面に張り詰めていて、時に仕組まれた驚きの瞬間があり、また、もっと凄いのがその狙いまで越えてしまう奇跡としか言い様のない素晴らしい瞬間が訪れることだ。

上映後に鈴木監督がトーク中に発した言葉を拾ってみよう。

・「映画は『行為』そのものだと思っていた」

・「フォルムにこだわって、それが撮りたくて仕方がないということが動機だった」

・「頭で考えた行為を越えるものを呼び込みたい」

鈴木監督の8ミリ作品には「自意識」と「劇映画」の間にある、何かが映っていた。自分と自分の周辺を撮っているのにも関わらず、多くの「インディーズ映画」と違って内向せず、外へ開かれていた。比べると完成度の高い学生映画などは「箱庭」みたいに閉じているように感じる。鈴木監督の8ミリ作品には「風」が吹いているのだ。

そう言えば普通の女の子が発する無防備なエロスにドキドキするのも、風が吹いているせいだろう。(井口昇監督の8ミリ映画『わびしゃび』もそうだった)

その風は「青春」とも親和性が高い。青春期の、あの目的もなくダラダラとした無為な時間が流れて行く切なさと背中合わせの豊かさ。あの豊かさがそのまま映ってしまうのだ。

あと、鈴木監督の8ミリ時代の親交(園子温、平野勝之、井口昇、矢口史靖、斉藤久志 敬称略)の話なども興味深かった。青春期を一緒に過ごした一群が、その後も映画監督として活躍するのは、何も立教大学だけではないのだ。

12/24
京都造形芸術大学で2年生のゼミを受け持っている。
生徒は20名ほど。それを2チームに分けて、それぞれ30分ほどの映画を作る授業である。

で、24日、制作の女生徒に「撮影を観に行きます」とメールを送ると「×××交差点に0時に来て下さい」と指定があった。...あ、朝まで帰れないのね。

という事で撮影立ち会い。
いやぁ、今年の4月は頼りなかったけど、今やチーム一丸でテキパキと現場を進めて行く頼もしさ。

で終わってから2組とも少しだけラッシュを見せてもらった。

1組は長回し1カットのミュージカルシーン。一生懸命アイデアを出したんだなぁーという微笑ましくも嬉しい驚きだった。ちなみに音楽は小倉向君の弾き語りで凄く良い。

もう1組はラブホテルで女性の裸体を、エロティックだけど下世話な感じのしない上品さで捉えていて、その生々しさに「おお!」という感じ。これも期待出来る。

今年の2作品も完成が待ち遠しい。
学内合評会は1月末。
12/22
『クリスマス・ストーリー』
(監督:アルノー・デプレシャン)
@梅田ガーデンシネマ

観ている最中、幸福感に包まれ、何度も胸が熱くなって涙が出た。今年見た数少ない映画の中でベストの1本。

クリスマスに6年ぶりに実家に集合した大家族の数日間を描いた物語で、シリアスだけどどこかユーモラスな人々を、遊び心ある映画ならではの描写を散りばめながら、暖かい目線で描く。山盛りのエピソードをテンポ良く捌いて、軽やかにかつ濃密に、150分の上映時間をアッと言う間に見せる。

音楽にメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』序曲が繰り返し使われていた。冬の映画に夏の音楽という遊び心も面白いが妖精によって数組の夫婦が混乱におちいるシェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』を踏襲しているからだろう。しかし興味深いのはその序曲が盛り上がる直前に曲がフェイドアウトして終わる事。僕はその盛り上がる箇所が好きなので「いつ来るかいつ来るか」と気を揉んだが、サスペンスフルな弦楽器のイントロだけで、ついぞブレイクはやって来なかった。
しかし映画を最後まで見て、曲のブレイクがやって来ない意味が理解できた
この映画の登場人物は、ほぼ全員が破綻のギリギリ手前にいる。
しかし、人々は決定的な破綻の手前で、悲劇に陥らないギリギリで踏ん張り続け、人生を生き続ける。そのバタバタと必死な姿は滑稽だ。
音楽はそれを象徴していた。
この【悲劇ギリギリの喜劇】と言えば、エドワード・ヤンの『独立時代(邦題:エドワード・ヤンの恋愛時代)を想起するが、その現代性は今も通用するのだと思った。

12/23
下鴨車窓『王様』@アトリエ劇研

冒頭に旅芸人のような集団が着替え始め、舞台中央の白い布がつり上げられ、その下で中世のコスチュームプレイが繰り広げられる。
場面は王様の葬儀だが死体は無い。死体が無いので、死んだものとして死体を探す者、生きていると信じる者、王様の家族はそれぞれ「王の不在」に翻弄される。そして折しも王国の「外部」では戦争と犬になる病が蔓延し、ぼんやりした不安感が漂っている。
役者たちは過剰なほど大仰に演技し、時に「メタ」な熱演に客席から時々笑いが起きる。
物語は王位継承を巡る古典的なものなので、退屈せずに最後まで観ることができた。

しかし正直言って、いくつかの重要な要素がよく分からなかった。もちろん物語は分かる。しかし、「天井の白い布」「不在の王様」「犬」「冒頭の旅芸人」「今まで現れなかった新しい人物」など、様々な劇を構成する要素の扱い方、演出が、ぶっきらぼう過ぎるのではないかと思った。おそらく作者は「観客が考えればいい」と思っているのだろうが、それにしても、劇内に思索のヒントを用意しておくべきではないかと思ったのだ。

観劇後、作演の田辺剛氏と長時間お話しし、「ああそういう事か」とだいたいは腑に落ちた。しかしやはり、それは観劇中の僕には分からなかった。説明不足が悪いと言いたい訳ではない。「全てが明瞭に語られるべきだ」等とも別に思わない。ただ「謎」は「謎」と提示されないと、観客は「謎」とすら気づかないのではと思うのだ。その為には「枠」が明示されるべきだと思った。
おこがましい言い方だが、「枠」の曖昧さゆえに、そこからのズレである「謎」がよく分からない物として霞んでる印象を受けた。これは自戒すべき事だとも思った。

って偉そうな事言ってるな俺(反省)
ちなみに田辺氏自身に対しては、僕のうるさい意見にも耳を貸してくれる、とても真摯に創作に向き合ってる方だなぁと感心した。
頑張ってる人はそれだけで尊敬します!
12/17(金)
安い夕方の便で釜山へ。実際、関空から1時間20分なので、東京や名古屋ヘ行くより、あっと言う間。しかも片道の飛行機代は1万円程度。近いな釜山。
寒かったが、泊まったホテルがオンドル(床暖房)で快適。
この日は一緒に行った同居人(釜山旅行5回目)の買い物などにつき合う。

12/18(土)
街へ出て、古い市場で麺を食べる。あっさりいい味のスープで凄く旨い。調子に乗って、すぐ横の屋台で「ホット」と呼ばれる密の入ったパンケーキ状の食べ物を購入。歩きながら食べる。これもスコブル旨い。
同居人がショッピングセンターで買い物中、僕は一人、言葉も通じない土地を住宅地の方へ散歩する。路地や古い店や家の造り、そこを歩く人なんかを見てるだけで退屈しない。坂道をどんどん山の方へ上がってしまい、待ち合わせ時刻を遅れそうになったので慌てて戻る。
その後、海の方へ。夏は観光客でいっぱいらしいが、冬の海は散歩する人や凧揚げする子供がチラホラいる程度で、良い散歩道だ。
夕方、友人のウネちゃんと合流。彼女がおススメの「泥をつけて鳥を焼きます」というお店へ。この焼き鳥が最高に旨かった。そこにウネちゃんの彼氏が編み出したという「アサヒビール」という名のカクテル(?)を飲む。中身は韓国のビールと韓国焼酎とサイダーを割った物。悪酔いしそうな飲み物だったが、料理がおいしいので酒が進む。
その後バーを一軒ハシゴし、お目手のライブハウス「ヴァイナル・アンダーグラウンド」へ。
壁にベルベット・アンダーグラウンドのアルバムにも使われているアンディ・ウォーホールのバナナが大きく描かれ、VYNILの名の通りレコードが沢山並んでいる。
この日、韓国映画『子猫をお願い』の音楽を手がける【Byul.org】という男性2人組のアーティストのライブがあり、うちの同居人はけっこう熱心なファンらしく、今回の2泊3日という短い釜山旅行の目玉であった。と言っても、いわゆる韓流スターのような派手な感じはなく、どこか初期スーパーカーを思わせるようなサウンドのインディーズバンドなのだ。


2人組の1人はソウルで活躍するデザイナーでもあるらしく、ウネちゃんは写真を一緒に撮っていた。しかしソウルでは人気らしいのに、釜山ではまずまずの入りという感じ。こういうのって、東京と大阪でもあるよなーと思いながらライブ開始。
キラキラした浮遊感あるダンストラックに、不器用な感じの男性ボーカルが絡む。気持ちよく踊れると思い、ゆらゆら踊っていたが、釜山のファンはお行儀良く床に座って聞いている。1曲目が終わり、ボーカルの男性が「テキーラを一瓶、ステージ前に置くので飲んでください」というような事を言う。遠慮の空気がはびこり始めたので、持ってたビール瓶に勢いよくテキーラを流し込んだ。すると、周囲から「おー」という小さな歓声が起こったので、これは皆きっと盛り上がりたいに違いない(この辺から思考に酒酔いが影響し始めている)と思い、周りの座ってる数人に「踊らなソンソン」と語りかけた(言っておくが僕は韓国語も英語もろくに話せない)。すると何人かが立ち上がったり、面白がってくれたので、上機嫌で音に体を任せた。
だって「日本から変な奴が来て、上機嫌に踊って気持ち良さそうだ。そうだ俺らも踊ろうか」と1人でも思ってくれたらいいじゃない。
全てのライブが終わり、DJタイムになったのだが、その辺りから記憶が無い。
気がつくとホテルの床に寝ていて、同居人がブチギレていた。
どうやらDJタイムでカウンターにつっぷして寝てしまい、起きたかと思ったらゲロ吐いて倒れたらしい。そりゃすまない。いや、マジでごめんなさい。

12/19
彼女のブチギレが少し収まり、巨大百貨店へ。村上春樹の「1Q84」がベストセラーで山積みだった。あと東野圭吾も1棚の3分の2くらいのコーナーが出来てた。マンガも人気で日本語のままの「アニメージュ」も置いてあった。
そういや、ウネちゃんの実家は雑貨屋だそうで、母親が切り盛りしている。ある時、お客さんが「ドラえもん」のグッズを指差して「これは何だ」と聞くので、適当に名前を覚えていたウネちゃんの母親は「トライだ。トライ」と答えた。韓国語で「トライ」は「キチガイ」の意味で、青くて丸い顔の奴が片目つぶって舌出してるから「キチガイ」だと思ったんだろう。雑すぎる...。
ショッピングを済ませ、出国前に最後の韓国料理、ユッケジャンを食べた。これもスコブル旨かった。
そして夕方の便で帰国。全部で3万円と少ししか使っていない。
釜山、かなり気軽に行ける。

帰宅したらライブハウスで語りかけた男の子の1人から
Your dancing is very attractive!」とツイートが届いていた。
12/14
『ゲゲゲの女房』(監督:鈴木卓爾)
@なんばパークスシネマ
NHKのドラマの方は数回しか観ていないが、大衆向けを意識したお涙頂戴の人情ものという感じで、それはそれで別に不快でもなかったし、人気があるのも分かった。

で、映画の方だが、上品で可愛いらしい作品だった。とても丁寧で、さりげなく大胆で、志の高い映画だと思った。
鈴木卓爾さんは『さわやか三組』の遊び心満載の脚本家として、または『パルコフィクション』でのトリッキーなアイデア満載の監督として、僕はずっとファンであったが、この『ゲゲゲの女房』では遊び心をそのままに、人々の生きる佇まいや息づかいを捉え、静かなカメラでみせる成熟ぶりに、素直に驚いた。
何故かマキノ監督『花子さん』を思い出したけど、よく考えたらマキノの『花子さん』、もう15年以上前に観たから詳細忘れた。あ、だからだけど、個人的にはオペレッタのシーンが欲しかったなー。ちょっと鈴木監督ファンとしてはもっともっと遊びにも力を入れて欲しかった。日常に妖怪や生き霊(?)や現代の風景が入って来たりして面白いんだけど、やっぱオペレッタ見たかった(笑)
でも上品さが嫌みじゃなくて、とても心地良い映画だった。
あと、妖怪役である親友の宇野祥平の満面の笑顔がよかったよ。 


12/16
『スプリングフィーバー』(監督:ロウ・イエ)
@シネマート心斎橋
この作品も佇まいや息づかいを繊細で大胆なカメラで捉えた映画。
ゲイも含む三角関係がまた別の三角関係に、そしてまた別の三角関係にと移行して行くのが面白い。性愛における、動物としてのどうしようもなさ、が全編を覆う。性愛に捕われた人間は切ない生き物だ。
3人旅行のくだりで成瀬の「浮雲」が浮かんだのは、女が真知子巻きしてるからもあるだろうけど、男女が性愛の果てに流浪する様が、もうグッと来て泣きそうになった。あと映画の中のカラオケのシーン、同じ中国のジャ・ジャンクー監督『一瞬の夢』でも出て来たけど、名場面だった。
流れ流れて、でもそう生きるしかない感じが最後まで、行くとこまで行って、でもドロドロのドラマになる一歩手前の節度があって。
個人的な好みで言えば、その魂はどこかへ彷徨い出して欲しいけど、あの繰り返すラストも良いと思った。
好きな映画だ。
観終わったあと、誰かを抱きたくなった。僕も性愛に捕われた哀しい人間ってことか。

12/10

子供鉅人『アッパーグラウンド』

@大阪芸術創造館


大阪では最も元気な劇団の一つであり、ダンサー的身体を持つ長身2mの不気味な兄弟=益山貴司&寛司を筆頭に、個性強すぎる役者陣を揃え、関西の同世代ミュージシャン達との交流から音楽ライブの要素も加え、アングラからエンタメまで「ええとこどりの見せ物小屋イズム」を目論む劇団『子供鉅人』の活動5周年記念公演、その名も『アッパーグラウンド』。これって子供鉅人を表した言葉としてピッタリだと思う。


会場に入るとそこは作業員が行き交う鉄筋剥き出しの建築現場! 世界崩壊後に人類が新しく建設しようとしている都市の一つ『アッパーグラウンド』は、観客の目の前でまだ建設中。もう始まる前にわくわくさせられる。こういう期待感を持たせる劇団はやっぱ重要だ。


始まるとすぐドタバタが起こり、歌あり踊りあり、繰り広げられる様々な個性剥き出しの人間達、総勢数十名の大群像音楽劇。色々な飛び道具が飛び出し、果てはホンモノのお婆ちゃん(かなーりご高齢なのに芸達者でビックリする)まで登場する徹底した『見世物小屋イズム』で、本当にお腹いっぱいのまま最後まで飽きさせないで一気に見せる。


舞台の上部に並ぶ生演奏バンドも「オシリペンペンズ」のキララさん、元「あふりらんぽ」のピカチュウさん、「たゆたう」のイガキさん、あちこちで活躍するドラマーワタンベさん等、それだけでイベント組めるじゃん!という豪華メンバー。この生演奏バックに役者陣が歌いまくるのだから、ショーの要素も満載である。


面白かったという前提で、あえて物申せば「詰め込み過ぎ」の印象(笑) 以前、僕の短編映画の試写に来てくれた益山兄と飲んでた時に、「西尾君、詰め込み過ぎやわ」と言ってた貴方こそ「詰め込み過ぎ」でどうする(笑) 別に言い返したい訳じゃなくて、そうしたい気持ちがよくわかるくらい贅沢な状況に今、子供鉅人は居るのだろう。あの人も参加、この人も参加。ただ、やはり一つ一つのエピソードが大味になってしまってる感はあった。でも、その少しのマイナスを感じさせないハイテンションとスピードとクレイジーさはやはり子供鉅人の真骨頂だろう。これは個人的な好みとして、傑作『キッチンドライブ』のような、馬鹿騒ぎの後の侘しさを生きる人の、静かな時間までまた見たいと思う。あの演劇で回っていた本物のレコードを皆が聞く時間、あれが今回の舞台にも欲しかったなぁ。


とにかく『ザ・キャラクターズ』に続き次回の「野田地図」にも出演が決まった益山兄弟率いる、6年目に突入した子供鉅人にさらなる期待をする。